泪の花。
あの日から今まで…


ずっと、眠ったおばあちゃんしか浮かんで来なかった。


忘れたくないと、怖いと思っていた私が…


一番近くに居たおばあちゃんを見失っていたんだ。



『おばあちゃんは…泣くな、なんて言いませんでした。泣いていいんだよ。って触れた手は、私の心に直接触れているように優しかった。こんな優しい記憶だってちゃんとあるのに、私は見て見ぬふりをしていたんですね…』



椿姫さんはにっこり笑って



「今から、ゆっくりと思い出して自分の中に刻んでいけばいいよ。おばあちゃんの記憶も、今から始まる新しい出会いも。」



『あなたは…素敵な人ですね。』



「そう?海斗からはガサツだって言われていつも喧嘩になるけど。」



とニィっと笑った。



『アイツ…いや、海斗君あなたが大好きですよ』



そう言うと、知ってると言ってまた笑っていた。

< 160 / 203 >

この作品をシェア

pagetop