泪の花。
着替えを終えておばあちゃんの部屋へ行くと、アイツはおばあちゃんの写真に手を合わせていた。



「…3年経ったな、やっと決心ついたか?」


何を…

言ってるんだ?

コイツは…




「由貴さんに会いに行くんだろ?」


『えっ?』


なんで…おばあちゃんの名前を知ってるの?

そう聞きたいのに、喉に蓋が閉まってしまったかのように声が出て来ない。



「ホントに、全く…覚えてないのか?俺の事。」


そう言って、寂しそうに歪んだ顔を見て分かった。



『あの時の、男の子…?』


おぅ。


と低い声で返事をしたアイツ。



なんだか…居たたまれない。


やっと会えた男の子はいつも側にいたなんて…


あの時、私の代わりに涙を流してくれたあの子が…コイツだったなんて。


下を向いて動けなかった。


「初美…怒った?」


不安そうに尋ねるアイツ。


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