泪の花。
時は経ち


私は中学生になった。


でも、泣き癖はなかなか治らなかった。


いつものように祖母の部屋に行くと、そこには…見知らぬ男の子がいた。



入った瞬間、部屋の空気がいつもと違うのを感じ、鳥肌が立った。



眠ったように横たわる祖母は、冷たくなり…息をしていない。




おばあちゃんと呼んでも返事はなくて…


『初美』


と呼んでくれる優しい声を聞くコトはもう叶わないのだと、心のどこかで分かっていた。



一番悲しい筈なのに涙は出てこなくて…



この日…私は初めて泣く事を怖く感じた。



泣いても受け入れてくれる祖母がいなくなった。

という事実は私の感情に一つ一つ蓋をしていった。



心の中にポツポツと墨が落ちたように黒く浸食されて、真っ暗になっていく。



隣で涙を流す見ず知らずの男の子に、誰?という質問をする気力も起こらなくて、その男の子は祖母の手を離して、今度は私の手を握ってボロボロと大粒の涙を流し始めた。



永遠に続くように感じた時間の中で祖母をずっと見つめていた。



私は…今までホントにどうでもいいコトに涙を流していたんだなと…思わずにはいられなかった。
< 2 / 203 >

この作品をシェア

pagetop