泪の花。
どうやら私は、物事を忘れる事が得意らしく。


呼び出された事も、イライラしたあの不愉快な感情も、つい最近の事なのに忘れかけていた。


いや、正確に言えば忘れてしまいたかったんだ。



高校受験やら、親との相談やらで気が重くなってきた初夏。


毎年、夏バテする朔來は今日は動けない程ひどいらしく、咲坂君も看病の為休んでいた。



先生には、私から二人共夏風邪を引いたと報告したが、何やら苦笑いをしていたような気がする。


暑くなり、自分の髪が鬱陶しくなって、初めてこんなに長くなっていた事に気付いた。



年頃の女の子が、身だしなみにこんなに無頓着になったりするのだろうか?


とぼんやり思っていた。


おばあちゃんがよく櫛を通してくれた髪、真っ黒で頑固なストレートの髪を綺麗ねと結っていた。

今になって思い出すのは、この一年間…


私は、本当に抜け殻で淡々と毎日を過ごしてきたという証拠だろうか?


何にしても、もっと自分を知っていかなければならない。


そう思った瞬間


ぐらりと視界が歪んで見え、心が悲鳴をあげた。

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