泪の花。
『この花…』



「俺、この花好きなんだ。」



なんでこの男は、私の側にいるのだろう。


なんでこの男が、この花を知っているのだろう。


ただの偶然が、苛立たしく思えた。


また…


ニコニコと私に微笑みかける。



なぜ笑うの?


あなたは一体何者なの?


「この花の花言葉…知ってる?」



『…』


“変わらぬ愛”だよ。


と言った横顔がおじいちゃんに見えて…

無性に心が熱くなった。


その花の名前は?


と聞こうか迷ったが、結局聞かずに保健室を出た。


おばあちゃん、おじいちゃんに聞く事が出来ただろうか?


そんな疑問が頭をよぎって…

おばあちゃんが知らない花の名前を、自分が知ってもいいのだろうか?


と躊躇してしまったのだ。


普通に考えて、死んでしまった人にモノを教える事は出来ないし、天国や地獄があるなんても思ってないけれど…


それでも、なぜか心に蟠りが出来てしまい、花の名前を聞く事は出来なかった。








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