泪の花。
お葬式の日


みんな泣いていて…


私は泣けなかった。


親は、私が大泣きするだろうと思っていたから、涙を流さずに祖母の隣にいる私に心底驚いていた。


泣いてお別れするコトも…

笑ってお別れするコトも出来なかった。


無表情のまま祖母を送り出した自分に嫌悪感を抱いた。



だが、その嫌悪感すらもこの上ない恐怖の下に沈めた。



私は、どうしようもない根性なしの弱虫で…



祖母への別れの言葉すら飲み込んだままだった。


私に

『泣いてもいいんだよ』
そう言ってくれる人なんて、きっともう居ない。

この先、生きていく中で私は何を支えにしたらいいのだろう?






あの日、母が部屋に来た頃から家の中が慌ただしくなったのはなんとなく覚えている。



ただ、私の隣に居た筈の男の子が居なくなってしまっていたのには気付かなかった。



あーだこーだと考える前に、分かっていた事は…私がいかに臆病者かという事。

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