泪の花。
時間通りにやってきた彼は、頭を下げてイスに座って、何か書き始めた。


それを私に渡して、少し俯いていた。



“今日は、少しお話がしたいです”


そう書いてあった。お話と言っても書くのだろうけど、私はそれを苦に思った事はなかった。


“なにを話しましょう?”


“好きな色は?”


“オレンジです。”


“好きな食べ物は?”


“みかんです”


“シャレですか?”


“違います”


“好きな動物は?”


“猫です”


“好きな…人は?”


ビックリした。
聞かれた事にじゃなくて彼の手が震えて字が歪んでいた事に…


“いないです”


“そうですか”


“あなたの…好きな色は?”



と、今度は私が質問をした。
別に知りたいわけではなかったけど、なんだか…聞かなくてはいけない気がした。

“黒です”


“好きな食べ物は?”


“トマトです”


“好き…なんですか?トマト。”


“特にミニトマトが”



スゴくおかしくて少しだけ笑ってしまった自分にビックリした。


何年振りだろう…


笑ったのなんて。
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