泪の花。
教室に戻ると、私の席に誰か知らない男の人が座っていた。



「久遠?」


誰?と思いながら頷いた。


「まだカバンあったから、待ってたんだ。入学早々サボったの?」


『あの、どなたですか?』


「えっ、覚えてないの?小学校の時クラス一緒だっただろ?」



まったく覚えていない。

もしかして、あの時の男の子?


『あの…うちの祖母をご存知ですか?』


「なんで?」


『いえ、何でもないです。』


知らないのかな?


深く聞くのも変に思えてちゃんと聞く事が出来ない。


変に思える?

違う、私やっぱり知る事を怖がってるんだ。


情けない…




「俺、中学は違ったけどさ…泣き虫だった久遠が泣かなくなったって聞いて…」


何かボソボソと話しているが、私は自分の中の問題が広がって…話なんて耳に入っていなかった。


「…ん、くお…久遠?」


『え?』


「俺の話聞いてた?」


『…すいません。』


勝手に話しているこの人に対して、悪いと感じていなかったが、言葉が先に出てしまっていた。
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