泪の花。
今にも、そう言ってしまいそうな程…喉元まで言葉が這い上がってきていた。


『あなたに…んっ!?』



口元にふわっと手が触れた。と思うとクルッと向きを直されてギュッと抱きしめられた。


抱きしめられた相手は、大嫌いなアイツだった。



「悪いけどさ、あんたじゃコイツを守れないよ。」


声しか聞こえない。


「お前、誰だよ!!」


謎の男が少し怒ったようにアイツに言っている。


「コイツをずっと見守ってきた者ですが、何か?」



ストーカー!!
と叫びたいのに、もごもごとしか言えなくて、口がうまく使えないのが苛立たしい。


どんなに必死にもがいても、頭を強く胸板に押し付けられてなかなかとれやしない。



「強く成長した久遠を見守る必要なんてもうないだろ!!」



その言葉は私の心にグサッと刺さって…体が固まってしまった。


「バカか…あんた。」


さっきまでのおちゃらけた声とは違う、別の人が話しているのかと思う位低い声。


怒っているの?


顔を見たいのに、やっぱり離してくれない。
< 44 / 203 >

この作品をシェア

pagetop