泪の花。
桃を渡した日、小学生だった私は


『私ね、朔來と一緒に食べるのが大好きだよ。』


と何気になく言葉にしていた…


その日


ようやく私と咲坂君の前で桃を口にした朔來は、美味しいと泣き笑いしていた。



「あの、朔來…その事知ってるんですか?」



咲坂君は何か複雑な表情浮かべて私に聞いてきた。


『言ってないです。これは…朔來が乗り越えなくちゃならない事だから。』



「ありがとうございます。」



咲坂君がお礼を言った意味はイマイチ分からなかったが、朔來は自分が一人じゃないとちゃんと理解っているのだと思う。


私は…いつまで理解ったフリをする気なんだろう?




「暗~い話は終わりましたか?」

間抜けな声に少し救われた気がした。


『バカもバカなりに役に立てるんだね』


「何!?いきなり!!意味分からん!!ヒドいって」


『咲坂君あとどのくらいで着くんですか?』




俺また無視なの?ねぇ!?


という雑音がうるさくて耳を塞いだ。



「30分くらいです」



と笑いながら答える咲坂君にだけ、ありがとうございます。と返事をした。
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