泪の花。
その言葉は、いかにも咲坂君らしいと思った。



でも、兄弟揃って見逃してる…


朔來が泣いた後に、笑顔になるには咲坂君が必要なの。


いつも側にいて、受け止めてくれる咲坂君が居なくちゃ…泣いた後の朔來は、本当に笑えない。





小学生の頃、朔來が泣いてる時に走って駆け付けてくれる咲坂君を、ヒーローみたいだと思った。


泣き顔の朔來を、笑顔に変える魔法使いだとも思った。



『朔來は咲坂君が好きよ、間違いなく。私に言ってたもの…春ちゃんは私の大切な人だって。あの恥ずかしがり屋が真面目な顔して私に言ったんだから、大丈夫。』



そっかって安心したように綻ぶ顔は、とても優しい表情だった。





ふと、窓の外を見ると空の色を溶かしたような青い海が広がっていた。




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