泪の花。
でも、やっぱり初美と呼ばれるとドキッとする…

なんでだろ?


あっ…そっか。



『私ね…さっき、あんたに名前呼び捨てにされて凄いドキドキしたんだ。』


「え…?それって…」


『でも、考えてみたら…おばあちゃんが死んでから名前で呼び捨てされたのはアンタが初めてなの。おばあちゃんしか呼んでくれなかったから…だから、あんなに心臓が驚いたんだ…』



何か言いたさそうな顔をしているアイツが喋り出さないうちに、私は続けた。


『両親は、私の名前にさんをつけて呼ぶの…多分癖なんだと思う。』



平気なフリをして話を続けるが、心では絞り出すような感覚だった。


おばあちゃんの事を過去として話すのは、とても苦しい…


この苦しさは、今でもきちんとおばあちゃんにサヨナラを言えないでいる私への戒め。



「人が死ぬって事は、毎日どこかで起きてる事だろ?こうやって今話してる最中にも世界中のどこかで沢山の人が長い長い眠りにつくんだ…」



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