泪の花。
ザザン…


と波の音が聞こえ、振り返ると、とっくに日は沈んでいて海が黒い鏡のように見えた。



月をうつして…水面がキラキラと光っている。


肩をポンッと叩かれて、その大きな手は頭に乗せられた。



「海斗は拗ねて、私から走って逃げてしまったよ」



とニコニコ笑っているお父さん、でもその横顔はとても寂しそうに見えた。




「私は、あの子達に寂しい思いをさせた…避けられても仕方のない事なのかもしれない」



『どうして、そう思うんですか?』


「あの子達の母親が体が弱い事は海斗が言ったから知っているね?それで…海外で治療する事が決まった時に、私はついて行きたいと思った。だが、あの子達は行きたくないと言ったんだ。小学生の…若干十歳の子供が“僕たちは、ここで…ここに残ってやらなきゃならない事があるんだ。”って声を揃えて私に言った。そのやらなきゃならない事は、二人共決して教えてくれなかったけど、春は朔來さんが気掛かりだったんだろうとすぐ分かったよ。」


『結局ついて行ったんですよね?』

< 69 / 203 >

この作品をシェア

pagetop