泪の花。
窓の外に椛があって、少し赤く色づいていた。



「もう秋だな」


『私、秋が一番好き。』

「そうなの?」


『うん、春も好きだけど』


するとアイツは顔をしかめて私を見ている


『なによ』


「春斗を好きって言ってるみたい」


『…バカじゃないの?』



真面目に、ふざけた事を言うコイツがおかしくて笑ってしまった。


「あっ、笑った。俺の目標達成。」


とVサインを私に向ける。


意味が分からず頭を傾げると



「俺の目標は1日一回、初美を笑わせる事。まぁ、いっぱい笑ってくれれば嬉しいけど。」



そう言って笑った顔に、胸がギューッと熱くなった。



なんでコイツは、私が嬉しくなるような言葉をくれるのだろう?



嬉しくて、悔しくて、意味の分からないこの感情を、抑えるのが堪らなく苦しい。




「初美?」



呼ばれても顔を見る事なんて出来ない。


私は多分真っ赤な顔をしているから…


「顔上げてよ」


『イヤ!!』


「また赤面してんの?」

『~ッ!!』


ムカつく!!

絶対笑ってる!!




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