深想シンドローム
花壇に着くと、あたしは慣れた手付きでホースを手に蛇口を捻った。
もう水やりは手慣れたものだ。
弧を描くように腕を横にずらしながら、まんべんなく花に水をあげる。
するとさっきまでのイヤラシイ考えが、どこかに飛んでいったような気がした。
「…ふう。」
水やりを終え、一息つく。
いつもなら慌てて教室に戻るけれど、いつもより早く来てしまったあたしは花壇を眺めながらその場に座り込んだ。
…が、飛んでいったと思ってたはずなのに、先ほどのみんなとのやりとりを思い出してしまう。
ううう。
もう嫌だぁ…。
そんなこと考えちゃうあたしって、本当はエッチなのかな?
「いやいや!あたしはエッチなんかじゃないしっ!」
そう叫びながら、すくっと立ち上がったその時。
ガサ…、っと背後から音がして、あたしは弾かれるように振り返った。
植木の横から見える誰かの足、そして靴。
ウ、ウソっ!
人が居たの!?
も、もしかして今の独り言聞かれてた!?
やだやだーっ!
あたしは決してエッチなんかじゃないんですーっ!!!
恐る恐る植木に近付き、意を決してそぉっと奥を覗き込む。
「あ、あの~…、」
とにかく、誤解を解かなくちゃ!
そんなことを思いながら。