深想シンドローム


だけど、あたしの不安は見事に打ち砕かれた。


「…ね、寝てる…。」


聞かれてた、と思ってた相手は規則正しい寝息を立て、瞼を閉じている。

どうやらあたしの独り言は聞かれてなかったようだ。


「…よかったぁ。」

安堵しながらホッと胸を撫で下ろす。

でもすぐに我に返った。



…にしても。

この人、何でこんなところで寝てるの?


木の木陰に横たわり、学ランを枕にして寝てる男。

その髪は黒にところどころ金のメッシュが入っていて、耳には無数のピアス。

だらしなく下げられたズボンに、上はパーカー。


校則違反どころじゃない。



横に投げ捨てられた、数学の教科書を手に取る。


教科書、と呼んでいいのかもわからない程

ラクガキだらけのそれに書いてあった名前を読み上げた。



「…のざき、りる?」


そこにはお世辞にもキレイとは言えない文字で

“野崎 理流”と書かれていて。



…りるって、随分女の子みたいな名前してるなぁ。


なんて思っていると

“キーンコーン…”とタイミングよく鳴り響いたチャイム。




あああああっ!!!!






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