深想シンドローム


男の人に“キレイ”って言うのは間違ってると思う。

でも、その言葉しか思いつかない。


すっと伸びた鼻筋に、薄い唇。

まつ毛なんて風が起きるんじゃないか、ってくらい長くて。

吸いこまれそうな瞳は、真っ白な肌を引き立てるように漆黒に染まっていて。


…なんて言うか、日本人ですか?って思わず聞きたくなってしまう。



ぼんやりと見惚れていたあたしは、ハッと現実に戻される。


そ、そうだ!授業!


「あ、あの!」

と声を掛けた瞬間、だった。





「うわああああああ!!!!」


耳がキーンとするくらいの叫び声をあげ、その人が後退りする。

そりゃもう、オバケでも見たのか!ってくらいに。


いくらなんでも、そんな反応をされればあたしだって傷つく訳で。


「あの~…、」

と、声を掛けたあたしに、その人は言った。



「てめぇ、俺に何した!?」

「へ?」

「何したって聞いてんだろーが!」


な、何って…。


「お、起こしただけですけど…。」



何?
何だってそんなに怒ってるのー!?





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