深想シンドローム


「おい、オンナ。」


ビクン!と絵に描いたように体が跳ね上がる。


恐る恐る振り返ったあたしへ、野崎さんが言う。



「お前、名前は?」

「あた、あたし、ですか…?」

「オンナはおめーしかいねぇだろうが。」


鋭い目に捕まえられ、あたしは蚊の鳴くような声で答えた。

ここで答えなきゃ、何をされるかわからない。


「も、望月…深子、です。」

「みこ?」


そこで西くんが突然声をあげる。


「ああ!そうだ!みぃこ!みぃこって呼ばれてるよね!?」

「そ、そうです…。」

てゆーか、何で知ってるのーっ!?



「ふーん。」

と大して興味なさそうに呟き、野崎さんは自ら名乗り始めた。



「俺は野崎。野崎 理流だ。」

「へ?」

「やだなー、エース!エースの名前知らない人なんか居ないっすよ!」


ゲラゲラと笑う西くんに、あたしは懸命に思考を働かせる。


今、あの人…何て言った?


のざき みちる、って。

エース、って。



まさか、この人が…


あの、かの有名なミチルくん!?!?






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