深想シンドローム


今にも泡を吹いて失神してしまいそう。

だ、だって!


この人が“ミチルくん”だなんてーっ!!!



そんなあたしに、西くんは目の前で手を振る。


「おーい?大丈夫?」

「だ、だだだだだ大丈夫ですっ!」

「あ、もしかして知らなかった?」


…ええ、顔は存じ上げませんでした。

噂なら嫌ってくらい聞いてますけれど!



すると再び
「おい、お前。」と呼ばれ、あたしは怯えた視線を野崎さん…

いや、“ミチルくん”に投げた。


眼光をギラつかせ、高い位置であたしを見下ろす噂の彼、ミチルくん。



「このこと誰かに言ってみろ。」

「は、はい…?」

「ただじゃおかねーぞ!」


寅年に相応しく。

雄叫びをあげた彼は、メッシュの入った髪を揺らし悪魔のような笑顔を浮かべた。



「わかったか、みぃこ!」

「は、はいぃぃぃぃぃっ!」


こうして、あたしはミチルくんとの初対面を果たした。


こんな最悪な形で。





…ていうか、すみません。



“このこと”とは一体、何のことなんでしょうか?







< 17 / 111 >

この作品をシェア

pagetop