深想シンドローム
そんなあたしに
ヒナちゃんが「ねぇ、ねぇ」と肘を突いてくる。
「そう言えば、どうだった!?」
「どうって…何が?」
「何がって、もちろんミチルくんだよ!」
カッコよかったでしょ!?と甲高い声で興奮するヒナちゃん。
そこでようやく思い出す。
端正な顔立ちと、すらっとしたあのスタイル。
吸い込まれそうな瞳。
…確かにみんなが騒ぐのも頷ける。
「うん、カッコよか…、」
そう口を開いた瞬間
脳裏を過ぎったのは眉間にシワを寄せ、あたしを睨む眼光。
『ただじゃおかねーぞ!』
「ひぃぃいっ!」
目の前に居る訳じゃないのに、思わず声が出た。
冷や汗が背中に走る。
「ど、どうしたの急に。」
「ううんっ!な、何でもないっ!」
そう答えるとすぐに気を取り直したヒナちゃんは二ヤリ、と目を細めてあたしに言った。
「ま、さすがのみぃこでも、ミチルくんは好きになっちゃうんじゃなーい?」
「あはは…。」
ないないっ!
『わかったか、みぃこ!』
あたしがミチルくんを好きになるなんて…。
天地がひっくり返っても絶対ないっ!