深想シンドローム
どうやらお姉さんは必要最低限な時にしか帰って来ないらしい。
ミチルくんが中学生の頃は一緒に居たみたいだけれど
高校に上がってからは住み込みの仕事を始めて。
それからはたまにふらり、と帰って来ては
生活費をミチルくんに渡し、こうして散らかして行くんだ、と西くんが教えてくれた。
「高校は色々とお金掛かるからねー、義務教育じゃないし。」
洗い物を終えた西くんは、器用にゴミを集めながら言う。
あたしには捨てていいモノ、ダメなモノの区別が付かない。
だから散らばった服を集め、それをひたすら畳む作業に徹した。
掃除機はその後かけることに。
「じゃあ、ミチ…エースは、この家にずっと一人、ってこと?」
「んー、そうゆうことになるかなぁ。」
「………。」
そうなんだ…。
寂しく、ないのかな。
あたしは家族みんなで暮らしてるから寂しい、なんて思ったことないけど
一人で暮らすなんてきっと出来ない。
笑い声も、あったかい食卓も、あたしにとっては当たり前で。
なのにそれが、この家にはないんだ。
つい、洗濯物を畳む手が止まる。
そんなあたしに、西くんは付け足すように言った。
「って言っても、俺とか他の仲間がしょっちゅう入り浸ってるよ。ここは溜まり場だから。」
「溜まり、場?」
「うん。エースを慕う仲間がね。」