深想シンドローム
「な、何これ…。」
扉を開けたその先に見えた、ミチルくんの部屋。
想像とはまるで違う。
一言で表わすなら、殺風景って言うか…。
あると言えば、大きなテレビとぎっしり漫画の詰まった本棚。
そして無造作に置かれた毛布。
とにかく、物がほとんどない。
今までの部屋がヒドイ有り様だったからか、逆に呆気に取られてしまった。
「入らねーのかよ。」
「っわあ!」
ミチルくんの声に、掃除機ごと跳ね上がる。
そんなあたしに口の片端を上げたミチルくんは
「お前って、イチイチ反応がおもしれーな。」
と横を通り過ぎ、部屋へ入ってゆく。
だからつい、その背中を呼び止めた。
「あ、あの!」
「あ?」
ミチルくんは顔だけをこちらに向け、振り返る。
ふいに香る、タバコの残り香。
それはどことなく、大人の匂い。
胸がぎゅっと縮まるような感覚が走り抜けて。
「…あ、ええっと、」
その目に見詰められた瞬間
何を言おうとしてたのか、それすら頭の中から飛んでいってしまった。