深想シンドローム


するとミチルくんは「あー、」と小さく呟き、部屋の奥に落ちていた“何か”を拾い上げて言う。


「もしかして、これか?」

「え?」


すっと目の前に差し出された、あるモノ。



「な、なななな…っ!」

一気に顔中に熱が集まる。


真っ裸の女の人が、イヤラシイ顔でこちらを見つめている某DVD…。

そう、アダルトビデオだ。


二ヤリ、と口元を綻ばせるミチルくんの顔は、悪魔そのもので。


「ミーコも見てぇの?」

「みっ、見たくありませんっ!!!」


全身全霊で否定すれば、ミチルくんは何故か大爆笑。



「~~~っ!」


今にも顔から噴火しそうなくらい顔を赤くするあたし。

完全にからかわれてるっ!



「と、とにかく!掃除するんで退いて下さいっ!」

「はいはい。…くくっ!」

「いつまで笑ってるんですか!」


ふん、と鼻を鳴らしながら、掃除機のコードを引っ張った。


ミチルくんは

「んじゃ、頼むわ。」

と言いつつ、部屋を出て行った後も笑っていて。



んもーっ!!!
ミチルくんのバカーっ!!!



あたしは心の中でそう叫びながら、意地になって掃除機をかけ始めたのでした。







< 56 / 111 >

この作品をシェア

pagetop