深想シンドローム


そう思ってたのは、どうやらあたしだけじゃなかったようだ。



「遅ぇよ、西。」

何してたんだ、と戻って来た西くんにミチルくんが問いただす。

ミチルくんの凄みに怯え肩を竦めた西くんは、上ずった声で答えた。


「す、すんません。雨宿りしてて、」

「雨宿り?」


思わずあたしとミチルくんの声がハモる。


そんなあたしたちに、西くんは憤慨した様子で言った。



「急に雨が降って来て来たんすよ!まぁ、通り雨だったみたいですぐに止んだんですけど。」

「そうなんだぁ。」

「え?ミーコちゃん気付かなかった?」

「うん、全然…。」


雨、降ってたんだ。

そう言われてみれば、西くんの髪ちょっと濡れてるかも。



「なら、仕方ねぇな。」

と西くんが買って来たサイダーを手に取り、ミチルくんはキャップを開けた。

炭酸の抜ける音が、小気味よく部屋に響き渡る。


この様子だと、ミチルくんも雨が降っていたことを知らないらしい。



「はい、ミーコちゃんのオレンジジュース!」

「あ、ありがとう。」

「俺はコーラー!」


とりあえず、あたしも西くんがくれたジュースを一口飲んだ。


甘酸っぱいオレンジの香りが、口いっぱいに広がってゆく。

体を動かした後だからか、何だかすごくおいしく感じた。






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