王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
今朝来た道を辿りかけたレジィに、か細いのに妙にはっきり通る声がかけられた。
「あなた、呼ばれた戦士?」
「え?」
振り向けばそこにはまだ年端もいかない少女。
きらきらとした翠の瞳がレジィを見上げてくる。
今年、10歳になったレジィよりもまだ年下だろう。
やわらかに波打つ金髪には白いレースで縁取りされた青いリボンが揺れている。空色のふわふわした衣装にはふんだんにフリルとレースが使われ、首元と袖口には銀糸で精緻な刺繍まで施されている。足元は白く光る皮靴。あきらかに身分の高い貴族の子女か何かだろう。
可愛い。
おそらくサレンス辺りがいれば可愛いと抱き上げてあやしまくりそうなくらいである。
しかし、いまだ姿を見せないサレンスに焦っていたレジィは失礼にならない程度に返事をするのが精一杯だった。
「違います。僕は従者として付いてきたものです」
言葉だけは丁寧だが素っ気ない返事であったのに、少女は気にした風もなかった。
「ふうん。ね、君、ちょっとこっち来て。おもしろいもの見せてあげる」
「あの、僕、急いでいますので」
「ダメよ。私の言うこと聞かないと」
「聞かないと?」
少女の高圧的な物言いに不吉なものを感じながらも思わず聞き返してしまう。
はたして。
「泣くわ。泣きわめいてやるんだから」
「あ、あの~」
レジィは今にも涙がこぼれそうな大きな翠の瞳に見据えられ、ため息をついた。
(もう勘弁してよ)
手のかかる大人の面倒は少しばかり慣れたつもりだが、手のかかる子どもの世話にはレジィは慣れてはいなかった。
「あなた、呼ばれた戦士?」
「え?」
振り向けばそこにはまだ年端もいかない少女。
きらきらとした翠の瞳がレジィを見上げてくる。
今年、10歳になったレジィよりもまだ年下だろう。
やわらかに波打つ金髪には白いレースで縁取りされた青いリボンが揺れている。空色のふわふわした衣装にはふんだんにフリルとレースが使われ、首元と袖口には銀糸で精緻な刺繍まで施されている。足元は白く光る皮靴。あきらかに身分の高い貴族の子女か何かだろう。
可愛い。
おそらくサレンス辺りがいれば可愛いと抱き上げてあやしまくりそうなくらいである。
しかし、いまだ姿を見せないサレンスに焦っていたレジィは失礼にならない程度に返事をするのが精一杯だった。
「違います。僕は従者として付いてきたものです」
言葉だけは丁寧だが素っ気ない返事であったのに、少女は気にした風もなかった。
「ふうん。ね、君、ちょっとこっち来て。おもしろいもの見せてあげる」
「あの、僕、急いでいますので」
「ダメよ。私の言うこと聞かないと」
「聞かないと?」
少女の高圧的な物言いに不吉なものを感じながらも思わず聞き返してしまう。
はたして。
「泣くわ。泣きわめいてやるんだから」
「あ、あの~」
レジィは今にも涙がこぼれそうな大きな翠の瞳に見据えられ、ため息をついた。
(もう勘弁してよ)
手のかかる大人の面倒は少しばかり慣れたつもりだが、手のかかる子どもの世話にはレジィは慣れてはいなかった。