王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
第5章 嵐の予兆
今にも雨が降り出しそうな曇天の下、栗毛の少年と金茶の髪の青年が言い争いながらも先を急いでいた。
「もうバジルさんが寝坊するからっ!」
「グレード、お前だって診察に手間取っていたじゃないか」
癒しの民、グレードとバジルである。
二人の瞳の色はともに黄白色。医術に長けた<癒しの民>特有の魔法の瞳、アイボリーアイであることは一目瞭然である。
「だから、バジルさんが手伝ってくれてれば、あれっ」
王宮目指して走る彼らの前に、横合いから飛び出してきた白銀の獣が立ちふさがる。
薄青の瞳が物言いたげに、彼らに向けられる。
「<氷炎の民>が連れていた雪狼……、たしかセツキとか」
「うおん」
グレードの言葉に答えるように雪狼が短く吠え、くるりと向きを変える。
「へえ、あれが雪狼か。意外と大きいものなんだなあ」
セツキを初めて見るバジルの感想である。
そのバジルの声に反応したのか、二、三歩、前に進んだセツキが振り返って再びどこかじれったげに吠える。
「うおん、うおん」
そして、また二、三歩、前に進む。
着いて来い、と言いたげなセツキのそぶりに気づいたのはグレードの癒しの民としての勘だったのか。
「何かあった?」
グレードがそう言ったとたん、セツキが駆け出す。
「ちょっ、待て」
セツキを追って、グレードが駆け出す。
「おい、遅刻するだろう」
そのグレードを追って、バジルが駆け出した。
「もうバジルさんが寝坊するからっ!」
「グレード、お前だって診察に手間取っていたじゃないか」
癒しの民、グレードとバジルである。
二人の瞳の色はともに黄白色。医術に長けた<癒しの民>特有の魔法の瞳、アイボリーアイであることは一目瞭然である。
「だから、バジルさんが手伝ってくれてれば、あれっ」
王宮目指して走る彼らの前に、横合いから飛び出してきた白銀の獣が立ちふさがる。
薄青の瞳が物言いたげに、彼らに向けられる。
「<氷炎の民>が連れていた雪狼……、たしかセツキとか」
「うおん」
グレードの言葉に答えるように雪狼が短く吠え、くるりと向きを変える。
「へえ、あれが雪狼か。意外と大きいものなんだなあ」
セツキを初めて見るバジルの感想である。
そのバジルの声に反応したのか、二、三歩、前に進んだセツキが振り返って再びどこかじれったげに吠える。
「うおん、うおん」
そして、また二、三歩、前に進む。
着いて来い、と言いたげなセツキのそぶりに気づいたのはグレードの癒しの民としての勘だったのか。
「何かあった?」
グレードがそう言ったとたん、セツキが駆け出す。
「ちょっ、待て」
セツキを追って、グレードが駆け出す。
「おい、遅刻するだろう」
そのグレードを追って、バジルが駆け出した。