王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
 アイボリーアイで確認してみても、どこが悪いと言うわけでもなさそうだ。しかし癒しの民の魔法の目といえども万能ではない。明らかな病変はともかく兆しまでをも見分けるのは容易ではない。

「とにかく、中に入ろう。もう時間だし、嵐が来そうだよ」
 
 頭上の雲は厚みを増し、遠く地響きのように雷鳴がこだましていた。
 少年を抱き上げるようにして立ちあがらせる。
 いつもは年よりもずっとしっかりとした少年が、常になくどこかぼんやりとした表情をしている。グレードにされるがままとなりながらも頑固に繰り返す。

「でも、サレンス様、迎えに行かないと」
「君が具合を悪くしたら、困るのはサレンスさんだろう。オレだっていつも治してやれるとは限らないんだよ」

 少しきつめに言い諭すと、少年は素直に頷いた。

「はい、すみません」

 そうして、自分に言い聞かすようにつぶやいた。

「そうですね。うん、そうした方がいいですね」
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