王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
 解散を告げられて、戦士たちのほとんどがまずは自分と同じ隊に組み込まれたものたちを探して移動する。謁見の間はあっという間に賑やかになる。
 もちろん、その中でレジィはサレンスを捕まえると、非難を忘れなかった。

「サレンス様、何してたんですか。氷炎の民の代表としてきているんですよ。遅刻だなんて、恥さらしもいいとこです」
「ああ、悪いな。ご婦人の誘いは断れなくてね」

 小さく肩をすくめて見せるが、悪びれた風もないサレンスの蒼い視線が流れる先には雷電の民クラウンの姿。
 しかし、彼女もなにやら隻腕の男性に説教を食らっているようだった。

「何、言ってるんですか。あのお姉さんまで巻き添えにして」
「だいじょうぶだ、同意の上だからな」
「同意の上で、何してたんですか」

 胡乱げに見上げるレジィにサレンスは少し首を傾げた。

「うーん、お茶?」
「何で疑問形? と言うかこの大事なときにそんなのん気な」

 がっくりとうなだれるレジィの白銀の頭を軽く叩いてバジルが進み出る。

「よう。あんたが噂のサレンス様か。随分心配してだぜ、この坊や」
「サレンスで頼む」

 苦笑いをしながらも、バジルの黄白色の瞳と一歩後ろを歩いてきたグレードを認めて言う。

「癒しの民か」
「ああ、バジルだ。グレードはあんたたちを知ってるみたいだったが」
「前にレジィが世話になった」

 まだ王都に来て間もないころ、レジィの痛めた足をグレードに治療してもらったことがあった。

「で、何の臭いだ? それ。移り香なんて色ぽいものじゃなさそうだが」
「臭い?」

 バジルに指摘されて、サレンスは自分の袖口を嗅いでみるが、すでに鼻が麻痺しているのだろう。

「よくわからないが」
「そういえば、変な臭いしますね。鼻がつんとするような」

 レジィが顔をしかめる。

「ちょっとっ! あの、こっち来てください」

 いつまでも終わりそうにない会話にグレードは割って入り、サレンスを引っ張って少し離れた柱のところまで連れて行く。
 ちらりとバジルに視線を送ると、彼は小さく頷いた。
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