王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
「どうしたんだ、急に」
不審げなサレンスにグレードはそのアイボリーアイをぴたりと向ける。
「怪我は……、してないですね? でも、少しお疲れじゃないですか?」
彼の内側の燃え盛るような魔力が、今は熾き火のようにごく静かであった。
少しどころでない消耗振りだ。
しかし、サレンスは怪訝げな顔をしただけだった。
「私がか?」
「消毒薬の臭いがします」
サレンスが漂わせるわずかな刺激臭はグレードやバジルたち<癒しの民>には馴染み深いものだった。
「ああ、そうか。それでさっきセツキにきらわれたのか。さすがは癒しの民だな。しかし、怪我をしたわけでもないし、消毒の臭いでもないだろ、これは」
「じゃ、なんなんです」
「秘密だ」
「……」
あっさりと返された言葉に、しばし絶句するグレード。氷炎の民の小さな少年の苦労の一端がわかる気がした。
グレードはひとつ小さなため息を漏らすと話題を変える。この銀髪の青年は穏やかそうな態度に反して、意外に口が固いらしい。それほど人付き合いが得意ではないグレードの手に負える相手ではなさそうだった。
単刀直入に尋ねる。
「レジィ君、いつもあんななんですか?」
グレードに言われて蒼い視線がレジィに流れる。
少年はバジルとなにやら楽しげに話しこんいる。その様子は常と変わらずに見えた。
「うん? そうだな、いつもあんな感じだが」
言葉が足りなかったことに気づいて、グレードは急いで言い足す。
「そうじゃなくて。急に眠ってしまったりすることがありますか?」
「子どもだからな。自分の体力以上に働いて眠り込んでしまうことなら、前はたまにあったが、最近はなかったと思う」
凍青の瞳が思慮深げな輝きを浮かべて、グレードに向けられる。
「だが、君がそんなことを聞くということは、あの子、どこか悪いところでもあるのか」
不審げなサレンスにグレードはそのアイボリーアイをぴたりと向ける。
「怪我は……、してないですね? でも、少しお疲れじゃないですか?」
彼の内側の燃え盛るような魔力が、今は熾き火のようにごく静かであった。
少しどころでない消耗振りだ。
しかし、サレンスは怪訝げな顔をしただけだった。
「私がか?」
「消毒薬の臭いがします」
サレンスが漂わせるわずかな刺激臭はグレードやバジルたち<癒しの民>には馴染み深いものだった。
「ああ、そうか。それでさっきセツキにきらわれたのか。さすがは癒しの民だな。しかし、怪我をしたわけでもないし、消毒の臭いでもないだろ、これは」
「じゃ、なんなんです」
「秘密だ」
「……」
あっさりと返された言葉に、しばし絶句するグレード。氷炎の民の小さな少年の苦労の一端がわかる気がした。
グレードはひとつ小さなため息を漏らすと話題を変える。この銀髪の青年は穏やかそうな態度に反して、意外に口が固いらしい。それほど人付き合いが得意ではないグレードの手に負える相手ではなさそうだった。
単刀直入に尋ねる。
「レジィ君、いつもあんななんですか?」
グレードに言われて蒼い視線がレジィに流れる。
少年はバジルとなにやら楽しげに話しこんいる。その様子は常と変わらずに見えた。
「うん? そうだな、いつもあんな感じだが」
言葉が足りなかったことに気づいて、グレードは急いで言い足す。
「そうじゃなくて。急に眠ってしまったりすることがありますか?」
「子どもだからな。自分の体力以上に働いて眠り込んでしまうことなら、前はたまにあったが、最近はなかったと思う」
凍青の瞳が思慮深げな輝きを浮かべて、グレードに向けられる。
「だが、君がそんなことを聞くということは、あの子、どこか悪いところでもあるのか」