王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
第8章 出陣
夜明け前、東の空が白みかけたころ、クラウンは王宮前の広場に到着した。
「あっ、クラウンさん。こっちです」
勢いよく手を振るのは、昨日の森の民の青年。
その側で何やら青年を嗜めているのは、まだ十代の半ばほどの少女。
その黒い髪には、小さな紅水晶と銀で花の形に仕上げた簡素であるが、造りのよい髪飾りが煌いている。少女の持つ清楚な初々しさが引き立つ一品である。
「使うてくれてるんやなあ」
「はい」
少女ははにかむように微笑む。茶色かかった黒髪の青年はどこか渋い顔だが、クラウンは無視する。
「叶うとええなあ」
クラウンの言葉にサハナは首を傾げる。
青年が少女に選んだ髪飾りは、恋愛成就の護符でもあったが、二人ともに教えてはいない。
「何でもあらへん。それよりもあの氷炎の民はんはまた遅刻かいな」
「誰が遅刻だ」
背後からの声に振り向けば、夜目にも鮮やかな銀の髪。
「おはようさん。そやけどそっちは生きてるん?」
クラウンが指差す先には、地面に蹲った雪狼の大きな背に体をあずけて眠りこける小さな少年の姿。
「昨日遅かったからな、寝かせておいてやってくれ」
「遅うまで何させてたん?」
「させていたわけではないんだが、見ていられなかったらしい」
「だから、何をや」
「縫い物」
あっさりとした答えになかばあきれ返るクラウン。
「はあ、何やねん、それ」
「今にわかるさ」
どこか楽しげに銀髪の青年は、謎めいた微笑を浮かべた。
「あっ、クラウンさん。こっちです」
勢いよく手を振るのは、昨日の森の民の青年。
その側で何やら青年を嗜めているのは、まだ十代の半ばほどの少女。
その黒い髪には、小さな紅水晶と銀で花の形に仕上げた簡素であるが、造りのよい髪飾りが煌いている。少女の持つ清楚な初々しさが引き立つ一品である。
「使うてくれてるんやなあ」
「はい」
少女ははにかむように微笑む。茶色かかった黒髪の青年はどこか渋い顔だが、クラウンは無視する。
「叶うとええなあ」
クラウンの言葉にサハナは首を傾げる。
青年が少女に選んだ髪飾りは、恋愛成就の護符でもあったが、二人ともに教えてはいない。
「何でもあらへん。それよりもあの氷炎の民はんはまた遅刻かいな」
「誰が遅刻だ」
背後からの声に振り向けば、夜目にも鮮やかな銀の髪。
「おはようさん。そやけどそっちは生きてるん?」
クラウンが指差す先には、地面に蹲った雪狼の大きな背に体をあずけて眠りこける小さな少年の姿。
「昨日遅かったからな、寝かせておいてやってくれ」
「遅うまで何させてたん?」
「させていたわけではないんだが、見ていられなかったらしい」
「だから、何をや」
「縫い物」
あっさりとした答えになかばあきれ返るクラウン。
「はあ、何やねん、それ」
「今にわかるさ」
どこか楽しげに銀髪の青年は、謎めいた微笑を浮かべた。