王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
「アウル君、ドラゴンは剣だけでは戦えないだろう。魔法だけでもしかり。協力していくことだ」

 憧れの青年に諭されて、アウルの頬が上気する。

「わかってます」
「ほんとうに?」
「それは」
 
 口ごもる年若い青年にベリルは意外なことを告げた。

「彼はああ見えて知略家だ。表面だけで判断してはならないよ」

 魔力を持たないアウルの眼には、上背があるが細身で端麗な容貌のサレンスは、単なる優男にしか見えない。
 それなのに彼の年下の幼馴染がころりと騙され、べた褒めである。

 さらにアウルにとってのきれいなお姉さんであるクラウンはサレンスと妙に親しげだ。忌々しいことこの上ない。

「でも、ベリルさん」

 抗弁しかけるアウルを遮るようにしてベリルは言葉を重ねる。

「その証拠に彼は編成に干渉している」
「えっ!」

 驚くアウル。
 サレンスは小さく肩をすくめた。

「気がついていたか。さすがだな。だが、要望を出しただけだよ」

 それにクラウンが補足する。

「わしを迎えにきた使者はんは元将軍さんやった。役職は消えても、人脈は残るもんやからな」
「俺も?」

 アウルの問いにサレンスは小さくうなづく。

「結果的にはそうだな。幸い私とクラウンは事前に話す時間が持てて互いの能力を活かせることに気づいたが、さすがにドラゴン相手には二人だけではきついだろう。三、四組単位の小隊が組まれるという話だったから、後は武器の扱いに長けたものを頼んでおいた」
「で、俺が選ばれた」

 アウルの眼差しが今日、初めてサレンスにまっすぐ向けられた。
 それに銀髪の青年は短く応える。

「そういうことだ」
「つまり、この面子を集めたのは、彼に考えがあったこそだろう。頼りにしてもいいと思うがね」
「ベリルさんがそう言われるなら」

 年若い青年にようやく本来の闊達さが戻ってきていた。
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