王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
第9章 導き手
 ドラゴン退治に出発した隊を見送り、待機を命じられたグレードはいったん診療所に戻リ、診療を続けることにする。
 隣には金茶の髪の青年バジル、すこし遅れて大事な預かりものの小さな少年と白銀の獣が続く。
 ちらりとグレードが後ろを振り向けば、レジィは前を向いてはいるが、どこか思いつめた表情で何事が一心に考えごとをしているようで、彼の視線にまったく気づいた様子はなかった。

「だいじょうぶかい? 君」

 声をかけられても反応がない。
 サレンスと別れてから、というよりもどうも広場で王妹殿下を眼にしてから、心ここにあらずという風情なのだ。

「レジィ君」
「え?」

 名前を呼ばれてようやくグレードに青い視線を向ける。

「えと、なにかご用ですか?」
「そうじゃないけど」
「そうですか」

 言いよどむグレードに返ってきた答えはごくあっさりしている。
 いつものよく気が回り利発なレジィなら心配げなグレードに気づいてもう少し何事か返しただろうが、少年はそれ以上は何も言わず、また自分の殻に閉じこもってしまった。
 その様子に眉根を寄せるグレードの肩をバジルは軽く叩く。

「放っておいてやれ」
「でも……」
「まあ、大事なご主人様と離れ離れだし、何か思うことでもあるんじゃねえの? まーだ子どもだしな」

 バジルの言葉は軽かったが内容は的を射ていた。
 グレードは反論できず、口を濁すだけだった。

「そうでしょうけど」

 もう一度振り向けば、やはりレジィの青い瞳は先を行くグレードたちを見てはいなかった。
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