王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
第10章 火口湖
王都より馬を乗り換えつつ二日、たどり着いた先は周りを崖に囲まれた湖。
綺麗な真円を形作る湖は青く澄んではいるが、その昔、火山の爆発より作られた火口湖ゆえ、棲息する魚類はいない。
その湖のほとりで身を丸くして黄金のドラゴンが眠っている。
湖を取り囲む断崖の上には、銀の髪の青年と彼よりもまだ年若い茶色かかった黒髪の青年の姿が見える。サレンスとアウルであった。
「ずいぶんとぴかぴかな鱗だな。ほら、あれ、あんたがクラウンさんにもらった髪飾りみたいだ」
森の民の青年の言葉にサレンスがうなづく。
「まさしくあれは金だろうな」
「だから王水? 金を溶かすとか言ってたよな」
「まあな」
大きい。
人の背の四,五倍はあるだろうか。
皮膜の付いた蝙蝠のような翼はたたまれ、四肢は地面につけた腹の下に引き込まれている。
長く太い尻尾も一部が巨大な身体の下敷きになっているため正確な大きさはわからない。
見つめるアウルの漆黒の瞳が細められ、剣呑な表情を作る。
「なあ、眠っているみたいだし、今、奇襲をかけちまえばいいじゃないの?」
今にも飛び出していきそうなアウル。
慌ててサレンスは彼を引き止める。
「いや、少し待て」
「何でだよ」
「ここ数日のドラゴンの生活周期からだと、うたた寝している程度だ」
ドラゴンが住処としているこの湖の側には一小隊が駐屯していた。
彼らはドラゴンと直接戦うための部隊ではない。来る日のために情報を集める偵察隊である。彼らの記録をサレンスは到着するなり見せてもらっていた。
強大な魔物は先程、どこからか帰還したばかりだ。
それでなくても眼を閉じ背を丸めて眠るドラゴンの姿は、何かあれば動ける浅い眠りでしかないことを示していた。
「ふーん」
疑わしげな返事をするとアウルは未練がましげにドラゴンを見下ろす。
それに微苦笑を浮かべたサレンスが言う。
「熟睡したところを狙おう。まずは準備だ」
綺麗な真円を形作る湖は青く澄んではいるが、その昔、火山の爆発より作られた火口湖ゆえ、棲息する魚類はいない。
その湖のほとりで身を丸くして黄金のドラゴンが眠っている。
湖を取り囲む断崖の上には、銀の髪の青年と彼よりもまだ年若い茶色かかった黒髪の青年の姿が見える。サレンスとアウルであった。
「ずいぶんとぴかぴかな鱗だな。ほら、あれ、あんたがクラウンさんにもらった髪飾りみたいだ」
森の民の青年の言葉にサレンスがうなづく。
「まさしくあれは金だろうな」
「だから王水? 金を溶かすとか言ってたよな」
「まあな」
大きい。
人の背の四,五倍はあるだろうか。
皮膜の付いた蝙蝠のような翼はたたまれ、四肢は地面につけた腹の下に引き込まれている。
長く太い尻尾も一部が巨大な身体の下敷きになっているため正確な大きさはわからない。
見つめるアウルの漆黒の瞳が細められ、剣呑な表情を作る。
「なあ、眠っているみたいだし、今、奇襲をかけちまえばいいじゃないの?」
今にも飛び出していきそうなアウル。
慌ててサレンスは彼を引き止める。
「いや、少し待て」
「何でだよ」
「ここ数日のドラゴンの生活周期からだと、うたた寝している程度だ」
ドラゴンが住処としているこの湖の側には一小隊が駐屯していた。
彼らはドラゴンと直接戦うための部隊ではない。来る日のために情報を集める偵察隊である。彼らの記録をサレンスは到着するなり見せてもらっていた。
強大な魔物は先程、どこからか帰還したばかりだ。
それでなくても眼を閉じ背を丸めて眠るドラゴンの姿は、何かあれば動ける浅い眠りでしかないことを示していた。
「ふーん」
疑わしげな返事をするとアウルは未練がましげにドラゴンを見下ろす。
それに微苦笑を浮かべたサレンスが言う。
「熟睡したところを狙おう。まずは準備だ」