王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
「ずいぶん、ややこしいことされるんで、すぐにはわからなかったです」
不満げに言うレジィにかの神は穏やかな態度を崩さない。
「そうするしかなかったのだよ。私はうつし世には<器>であるサレンスを通してしか干渉できぬ。お前も私を迂闊に呼ばないように自重していただろう。しかし、夢となればまた話は別だ。何しろ私は眠れる神なのだからな」
どこか苦く笑う氷炎の神<サレンス>は、創世の時代に犯した己の過ちのため、眠りに就いた神である。彼が真の目覚めを迎えるときは、世界が滅ぶときとも伝えられている。
「幸い王族の姫にも本人の自覚はないが巫としての力があった。彼女の夢を介してお前に働きかけることくらいは今の私でも造作のないことだ」
<サレンス>の言葉にレジィは一つこくりと頷いた。
「あの夢の通り、王様はお年寄りだしお姫様は実在しました。だから、僕はあれがただの夢じゃない、<サレンス>様が僕を呼んでいることに気づいたんです。今の僕にはまだ一人で夢を渡るほどの力はないですから」
レジィの<導き手>しての本来の力は何も氷炎の神<サレンス>を呼び下ろすだけではなかった。眠る神<サレンス>と直接交流するために、かの神の意識(ゆめ)の中に入ることができる。それを応用すれば他人の夢の中を渡ることも可能だった。
<導き手>とはまた<夢の渡り手>でもあった。
しかし、心身ともに大きな負荷がかかるため、まだ成人前であり氷炎の民の力すら封じられた幼いレジィ一人では、本来の力は発揮しえない。<サレンス>の後押しがあってこそだった。
「それじゃあ王家の宝珠の話も本当なんですね?」
レジィが昨日見せられた<夢>。
王の錫杖に嵌めこまれた赤い宝石。
王家の守護石でありながら、その力の発現のために王家の者たちの命を代償にし続ける宝珠。
「そうだ」
「それで、そうまでしての御用はなんですか?」
レジィの問いに対する<サレンス>の答えは意外なものだった。
「ああ、サレンスだ。あれは禁忌に触れようとしている」
「禁忌?」
いぶかしげに青い瞳をレジィは瞠った。
すっと<サレンス>が手を動かす。
「あっ!」
彼らを取り巻く青いだけの景色が変わった。
不満げに言うレジィにかの神は穏やかな態度を崩さない。
「そうするしかなかったのだよ。私はうつし世には<器>であるサレンスを通してしか干渉できぬ。お前も私を迂闊に呼ばないように自重していただろう。しかし、夢となればまた話は別だ。何しろ私は眠れる神なのだからな」
どこか苦く笑う氷炎の神<サレンス>は、創世の時代に犯した己の過ちのため、眠りに就いた神である。彼が真の目覚めを迎えるときは、世界が滅ぶときとも伝えられている。
「幸い王族の姫にも本人の自覚はないが巫としての力があった。彼女の夢を介してお前に働きかけることくらいは今の私でも造作のないことだ」
<サレンス>の言葉にレジィは一つこくりと頷いた。
「あの夢の通り、王様はお年寄りだしお姫様は実在しました。だから、僕はあれがただの夢じゃない、<サレンス>様が僕を呼んでいることに気づいたんです。今の僕にはまだ一人で夢を渡るほどの力はないですから」
レジィの<導き手>しての本来の力は何も氷炎の神<サレンス>を呼び下ろすだけではなかった。眠る神<サレンス>と直接交流するために、かの神の意識(ゆめ)の中に入ることができる。それを応用すれば他人の夢の中を渡ることも可能だった。
<導き手>とはまた<夢の渡り手>でもあった。
しかし、心身ともに大きな負荷がかかるため、まだ成人前であり氷炎の民の力すら封じられた幼いレジィ一人では、本来の力は発揮しえない。<サレンス>の後押しがあってこそだった。
「それじゃあ王家の宝珠の話も本当なんですね?」
レジィが昨日見せられた<夢>。
王の錫杖に嵌めこまれた赤い宝石。
王家の守護石でありながら、その力の発現のために王家の者たちの命を代償にし続ける宝珠。
「そうだ」
「それで、そうまでしての御用はなんですか?」
レジィの問いに対する<サレンス>の答えは意外なものだった。
「ああ、サレンスだ。あれは禁忌に触れようとしている」
「禁忌?」
いぶかしげに青い瞳をレジィは瞠った。
すっと<サレンス>が手を動かす。
「あっ!」
彼らを取り巻く青いだけの景色が変わった。