王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
空中に浮かんだドラゴンと血赤の瞳と、アウルの朱に染まった瞳がにらみ合う。
傷を負わされ怒りに満ちてはいたが、ドラゴンは下手に森の民の青年に手を出せば、さらに傷を負うことを理解できないほど理性を失ったわけではなかった。
その背後でサレンスとクラウンが作業を続けていた。
クラウンの雷球。
彼女の掌の上で黄金に光るその中には、僅かだが水が含まれている。
それにサレンスが力の焦点を当て、熱し続けていた。
雷球は今にも弾けそうになるが、クラウンがそこにさらに圧力をかけ爆発を許さない。
極度の集中にお互い無言のまま、作業を続けていく。
極限までに物質の温度を上げること。それはサレンスたち氷炎の民にとっては禁忌とされてきたことだった。なぜならば、物質は、ある一定の温度を超えれば異なる物質に転移する。その際に放たれる膨大な力はとても制御しきれるものではないのだ。
しかし、クラウンの持つ雷の力はそれを可能にする。
高温に熱した物質の力を封じ込められる。
あたりには奇妙な匂いが漂い始めていた。雷が空気と反応して作り出される刺激臭。以前に癒しの民がサレンスから嗅ぎ分けた臭いでもあり、消毒薬の臭いと形容したそれである。
脂汗を額に浮かべ、すでに相当の消耗が伺える二人の姿にサハナは腰の短剣の柄に手を掛けた。これで戦えるとも思えなかったが、彼女にはもうそれしか残されてはいない。
「アウルはん、伏せてや」
クラウンがドラゴンと睨みあいを続けるアウルに声をかける。
彼女の手には白くまばゆく輝く雷球。
それを両手ですっと持ち上げる彼女の隣では、サレンスが荒い息をついていた。
その時だった。
「ダメです。待って下さいっ!」
少年の声が響いた。
傷を負わされ怒りに満ちてはいたが、ドラゴンは下手に森の民の青年に手を出せば、さらに傷を負うことを理解できないほど理性を失ったわけではなかった。
その背後でサレンスとクラウンが作業を続けていた。
クラウンの雷球。
彼女の掌の上で黄金に光るその中には、僅かだが水が含まれている。
それにサレンスが力の焦点を当て、熱し続けていた。
雷球は今にも弾けそうになるが、クラウンがそこにさらに圧力をかけ爆発を許さない。
極度の集中にお互い無言のまま、作業を続けていく。
極限までに物質の温度を上げること。それはサレンスたち氷炎の民にとっては禁忌とされてきたことだった。なぜならば、物質は、ある一定の温度を超えれば異なる物質に転移する。その際に放たれる膨大な力はとても制御しきれるものではないのだ。
しかし、クラウンの持つ雷の力はそれを可能にする。
高温に熱した物質の力を封じ込められる。
あたりには奇妙な匂いが漂い始めていた。雷が空気と反応して作り出される刺激臭。以前に癒しの民がサレンスから嗅ぎ分けた臭いでもあり、消毒薬の臭いと形容したそれである。
脂汗を額に浮かべ、すでに相当の消耗が伺える二人の姿にサハナは腰の短剣の柄に手を掛けた。これで戦えるとも思えなかったが、彼女にはもうそれしか残されてはいない。
「アウルはん、伏せてや」
クラウンがドラゴンと睨みあいを続けるアウルに声をかける。
彼女の手には白くまばゆく輝く雷球。
それを両手ですっと持ち上げる彼女の隣では、サレンスが荒い息をついていた。
その時だった。
「ダメです。待って下さいっ!」
少年の声が響いた。