王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
 声に真っ先に反応したのは、当然のごとく少年の主であるサレンスだった。

「レジィ!」

 振り向けば、白銀の獣にまたがった氷炎の民の少年の姿。
 彼の手には、なぜか紅玉がはめこまれた錫杖があった。

「お前、どうして」

 少年はかすかに首を振り、セツキから降りる。
 その場の皆の視線を集めながらも、そのままゆっくりとドラゴンに向かって歩き出す。
 その堂々とした自信ありげな態度に気圧されたか、だれも彼を止めるものはいない。
 アウルの隣に並び立つと、錫杖を差し上げドラゴンに話しかけた。

「探していたのは、これでしょう」

『しかり』

 全員の頭の中を声が響く。

「ドラゴンの声なん?」

 気が抜けたようにクラウンがつぶやく。
 彼女の手の中の雷球は急速に力を失っていく。
 それを横目に見届け、レジィが宣する。

「戦いは終わりです」

 氷炎の民の小さな少年を見下ろすドラゴンの血赤色の瞳は、なぜかあたたかな翠に変わっていた。



王国ファンタジア【氷炎の民】
       ドラゴン討伐編 -完-
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