境界上
.


「……そう」


――本当、この会社の男は“こういうの”に手慣れた連中ばかりで。


「それが本当なら光栄な話ね?」


つくづく“女”として退屈しないで済む場所なのよ。


「光栄、ですか?」


その、白々しさ全開の爽やかな笑顔や口調丁寧なセリフだって例外じゃない。

本来なら女の警戒心を剥がす為の“誠実セット”なんでしょうが。


今この場に置いてはその意味を成さないと。

その範疇でないと本能的に分かっていながら
“あえて”そうして振る舞う辺りなんて――


この“精鋭粒メン”の
“本領”がより興味深いというものだ。

(年下のクセになかなかの性悪ね、この男は。)


「ええ。わざわざうちの部の上司に顔利かしてまでアタシを“おつかい”に“選んで”くれたわけでしょう?」


更に“可愛げ”のない情報を追記するなら。

営業部は大抵どの部署にも顔が利く。

例え相手が他部署の上司であろうが何だろうが。

“口説き上手”なのは仕事上や女だけに留まらない。

これも有名な話。


「ははっ、そんな横柄な話じゃないですよ?
ここまで辿り着くのに相当骨が折れましたから」



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