境界上
.


「――――」


次の瞬間、アタシの鼻をBVLGARIの香りがくすぐったかと思うと――


ナチュラルにアタシの唇に到達した“オス”の唇。

と同時に、予想以上に最初から深く、絶妙な角度で舌が侵入を遂げてくる。


「――――ん……」


ああ、ビックリ。

巧いんだろうなとは思ってたけど、やっぱり予想以上。


“味見程度”のつもりが、うっかりメスの本能まで引っ張り出されそうなんて。

素面じゃ言い訳も立たないじゃない。


「………もしかして、このままアルコールの一杯も口にさせて貰えないのかしら?」


「ああ、ごめん。
矢沢さんに夢中で食事のこと、すっかり忘れてたよ」


しかも、程良く女のプライドを立てる言葉も忘れない。

本当、予想以上レベルの“掘り出し物”だわ。






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