境界上
.


「また蓮の部屋で朝帰り―?」


洗面台で顔を洗う後ろから、毎回知っていて聞いてくるそのソプラノ。


確かに間違ってはいない。

アタシは蓮の部屋にいた。

否定する気もない。


………けれど。

毎回、『蓮の部屋』だと決め付けてくるのがとても気にいらない。


「……ミオ、いつも言ってるけど」


「あ―ごめんごめん!
『蓮は恋人じゃない』んですよね? お姉様」


「……わかってんならシャクに触る聞き方しないでよ」


……この、何かしらお調子者な雰囲気を醸し出すうちの居候こと矢沢ミオは。

『お姉様』と呼ぶだけあって、紛れもなくアタシの歳の離れた妹だ。

(確か今年17だったっけ?)


とはいえ、普段は敬う気配もなければ名前も呼び捨て。

ただ、門限の厳しい実家に強制送還されるオーラを察知した時だけは、ちゃっかりアタシを今みたく『お姉様』と呼ぶ。

(というか、察知出来るんならわざと地雷を踏むな。)



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