境界上
.


一瞬、アタシを『ユイ』と呼んだ男にめまいがした。


『…………蓮?』


奇遇も奇遇。

偶然も偶然。


同期入社の新歓。

これが、8年ぶりの『幼なじみ』との再会だった。


『やっぱユイか!
中学以来だな』


妙な気分だった。

懐かしい感情の奥深く。
入り混ざった、妙な感覚。


『ははっ、いつまで驚いてんの?
お前のその間の抜けた顔、懐かし過ぎ』


からかうように笑って。

ナチュラルにアタシの隣に座る蓮に。


『……失礼ね。間の抜けた顔って何よ?』


いつまでも“間の抜けた顔”になるほど。

軽口とは裏腹に、すっかり大人びて落ち着き払った蓮に。


『個人的には誉め言葉なんだけど?
そういう顔は案外ソソル』



――完璧に、
“男”の色を纏う蓮、に。




『………ソソルってどんな風に?』


そんな蓮に。

不覚にも“女”の本能が揺り動かされた。






< 8 / 46 >

この作品をシェア

pagetop