君と竜が望んだ世界
「そうだ、契約獣を遣わせたのは誰だ? 相当必死に駆けつけて来た。よく頑張っていた。軍部で厚遇するよう言いつけてきたからここには連れてきていないが……。
 それにしてもこの部隊、高位術士少ないのによく持ちこたえたな。急いできたけど最悪、全滅と言うことも念頭に入れていたんだ。」


 隊員、魔獣、山の様子を見渡しながら仮面の男が呟いた。

「契約獣は私のです。迅速な対応とご到着、私の遣いとはいえ契約獣への配慮に重ねて感謝申し上げます」


 あまり厚遇されない遣いの獣への対応に、カナトールは今度は腰を折って頭を下げてた。


「頭を上げてくれ少尉。あれは素晴らしい銀狼だ。気高く美しい毛並み、そしてその足も自慢して然(しか)るべきだ。
 気配を感じて外に出たら、あれも気づいて私の所に来たんだ。久々に賢い契約獣を、狼を見た」

 是非大切にしてやってくれ、と付け足して言った。

 仮面を全体に向け、男は事の次第を話し始めた。

「任務の話に戻るが、初期情報では魔獣は二十頭程しか確認されておらず、任務レベルCに区分されていた。
 だから少尉率いる対策部隊に任せる、という決断を下したわけだ。民商連から腕っ節の強い助っ人も二人加えたとのことで、実際は楽に終わるだろうと予想されていた。

 だが私が独自に行った調査で、……二十頭なんて少数ではあり得ないであろう、大量の獣の居た痕跡を見つけた。近日中にそいつらの殲滅部隊が出撃する、と聞いていたので急ぎ軍部に報告した。

 そして翌朝、ちょうど今朝だ。再び軍部に足を運んだとき、銀狼を見つけた。契約獣の様子を見て緊急性を感じたので……
 まぁなんと言うか、正式に援軍の許可を出させた。それでひと足かふた足か早いが駆けつけさせてもらった、と言うわけだ」


 仮面の男の話を聞きながら隊員たちはほっとした顔をしていた。
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