君と竜が望んだ世界
誰もが口を閉ざし、この空間で今耳に入ってくるのは、いたずらに通り過ぎる風が運ぶ、数少ない木々の葉を擦る音、それだけ。
「もう一つ。何人かはもう理解しているだろうが、俺が張った結界、この防御術式、氷透壁は貴様らの攻撃ごときでは壊れはせん。だから安心してローゼンフェルドに帰る準備でもしておれ。援軍と合流しても仕事は残っているんだからな」
そう言うと膝を曲げてしゃがみこみ、足全体に力を込めた。肉体強化の術力が体を駆け巡るのが術士たちには見えた。
「そうそう、俺の氷透壁を破れたなら歓迎しよう。では」
そう言って一気に跳びあがり、フォルセティ1は一人で獣たちの方へ向かって真昼の青空を駆けて行った。
やさしく穏やかだと思っていた彼の殺気たる威圧と口調にその場の全員がたじろぎながら、フォルセティ1の身のこなしに目を奪われていた。
驚いていると、わずか数秒足らずで群れに混ざり、数頭の獣の首が飛んでいた。
遠目にもわかるまさに“瞬殺”。
その言葉通り瞬く間に魔獣・鋼狼たちの生が絶たれてゆく。
距離がありすぎてよくわからないが、剣か刀か、そんな細長いモノを振るっていた。
見とれてばかりではけない、とカナトールも隊の指揮をとり、作業に取り掛かった。
――◇――
小一時間ほど経った頃、フォルセティ1が戻ってきた。
氷透壁の中に立ち、戦いで熱の上がった体温を鎮めながら気持ちよさげに涼んでいた。
作業はカナトールのもとすでに終っていて、あとは援軍が合流し、二百個の塊の後始末だけだった。
「フォルセティ1」
カナトールが呼んだ。
フォルセティ1が自身の張った氷透壁の中で涼んでいると後ろから声が聞こえた。
頭を半分回して振り向くと精悍な、だが優しそうなカナトールと女の子が二人、たっていた。
「疲れているところ申し訳ありません」
頭を下げながら近づいてくるカナトールに、「もう終わったから敬語は不要」といって全権を返上すると無理やり返した。
「もう一つ。何人かはもう理解しているだろうが、俺が張った結界、この防御術式、氷透壁は貴様らの攻撃ごときでは壊れはせん。だから安心してローゼンフェルドに帰る準備でもしておれ。援軍と合流しても仕事は残っているんだからな」
そう言うと膝を曲げてしゃがみこみ、足全体に力を込めた。肉体強化の術力が体を駆け巡るのが術士たちには見えた。
「そうそう、俺の氷透壁を破れたなら歓迎しよう。では」
そう言って一気に跳びあがり、フォルセティ1は一人で獣たちの方へ向かって真昼の青空を駆けて行った。
やさしく穏やかだと思っていた彼の殺気たる威圧と口調にその場の全員がたじろぎながら、フォルセティ1の身のこなしに目を奪われていた。
驚いていると、わずか数秒足らずで群れに混ざり、数頭の獣の首が飛んでいた。
遠目にもわかるまさに“瞬殺”。
その言葉通り瞬く間に魔獣・鋼狼たちの生が絶たれてゆく。
距離がありすぎてよくわからないが、剣か刀か、そんな細長いモノを振るっていた。
見とれてばかりではけない、とカナトールも隊の指揮をとり、作業に取り掛かった。
――◇――
小一時間ほど経った頃、フォルセティ1が戻ってきた。
氷透壁の中に立ち、戦いで熱の上がった体温を鎮めながら気持ちよさげに涼んでいた。
作業はカナトールのもとすでに終っていて、あとは援軍が合流し、二百個の塊の後始末だけだった。
「フォルセティ1」
カナトールが呼んだ。
フォルセティ1が自身の張った氷透壁の中で涼んでいると後ろから声が聞こえた。
頭を半分回して振り向くと精悍な、だが優しそうなカナトールと女の子が二人、たっていた。
「疲れているところ申し訳ありません」
頭を下げながら近づいてくるカナトールに、「もう終わったから敬語は不要」といって全権を返上すると無理やり返した。