君と竜が望んだ世界
 目の前にある深いこげ茶色のドアをノックする。
 すぐに返って来た返事に合わせてドアを押しあけて中に入ると、初老の男がいた。

「失礼します。一週間遅れですが、本日からこの学園に通わせていただくハーヴェイ・ゼルギウスです。どうぞよろしくお願いします」

 軽く挨拶をすると初老の男が手を伸ばし、握手を求めてきた。

「初めまして。君がゼルギウス君だね。私が国立ネストリ学園の学園長だ。学長、とみんなは呼んでおる。
 歓迎するよ、こちらこそよろしく。」

「はい。それと、入学が遅れてしまい、申し訳ありません」


 部屋の奥の机に周り、自前の椅子に腰をおろして「君も座りなさい」と言いながら両肘をつく。


 ハーヴェイが来客用のソファに座ると、机の上に乱雑に重ねられている本や書類の中から封筒を取り出した。

「さて、入学が遅れたことに関しては君を推薦したエインズワース伯爵からすでに手紙をもらっている。心配は無用だ」

「はい。ありがとうございます」

「それ、今君が持っているのが我が校についての案内だ。それを見れば大体はわかるだろう。」

 渡された大きな封筒の中身を確認しながら説明を聞く。
 
「それから、うちは寮制だということは知っておるか?」

 その質問に軽く頷きながら返事をする。
 
「民商連のギルド方からも連絡があってな」

――『民商連』とは『民間商業連盟』のこと。連盟は基本的に、人員派遣および管理を行いで、ペット探しから要人護衛まで幅広い仕事を扱っている。

 民商連は仕事に必要な能力を備えた人材を依頼主に紹介したり派遣したり、または問題を解決させたりする。

 また、民商連は年間を通して仕事が舞い込んでくる。
 その“報酬”を求めて一般人は、試験を受けてその力を見極められ、資格やその能力に応じた仕事を求めてやってくる。
 暮らしの需要と供給の真ん中を仲介しているのだ。

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