君と竜が望んだ世界
 そして国軍以外で唯一、害獣や、自然・人為的災害等、都市や国の危機に対処すべく存在する民間組織である――


 前者が民商連と呼ばれるのに対して、後者は危険な依頼をも請け負う“民商連のギルド”とも呼ばれる。

 生活になじんだ比較的危険を伴わない仕事を受ける人や、危険を伴うようなレベルの仕事をする人。“加盟員”ギルド”もしくは大半が民商連に所属している事から“所属員”などと呼ぶ。

 国軍とも友好的な協力関係にもあり、国から依頼が来ることもある。
 つまり、この国は軍部と民商連ギルドによって防衛されているのだ。


 そしてここ、『国立ネストリ学園』は軍学校を除くと唯一、危機に対処すべく戦闘や術式操作について訓練する学科が設立されている学園である。


「それが君の部屋の鍵だ。ギルド方の要請通り、君に関しては、外泊自由だ。
 ただし、許可証は必要だがな」

 といって硬貨程の大きさのバッジを手渡した。

「そのバッジの必要性はこの学園がこの場所に建ち、特別に設けられた学科がある所以でもある。
それを持つものは数少ない。存分に振りかざすなり使うなりしてくれ」

 学長は、「でなきゃせっかくバッジを造った意味がない」、と言いながら見るよう、使うよう促した。

「……あの、具体的にどのように使うんですか」

 もらっただけではどうすることもできない、と静かにハーヴェイが尋ねた。


「ああ、えーっと、そう、緊急時などだ。学園や都市の緊急時や、民商連から招集がかかった時に自由行動を許可されている証だ。
ただ見せればよい」


「つまり、授業中抜けたり、寮を抜けたりする時に使う一種の小さな特権ですか」


「その通りだ。生徒・教師合わせてもそう持っている者はいない。万一の、有事の際はよろしく頼むよ。
そのためなら多少の私的使用も目を瞑るよ」



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