君と竜が望んだ世界
「これは一体どういうことなのか、是非聞かせてもらえますか?」
“国立ネストリ学園
高等一部 術式全科 一年
ハーヴェイ・ゼルギウス
民商連 ギルド Rank 6”
学園でのハーヴェイに関することが書かれた紙をひらひらと揺らしながら見せる。
「なぜ僕は術式全科なんですか? 僕の第一希望は『情報科』だったと思いますけど。
ちなみに第二、三希望は『一般教養科』と『文化科』です。
なぜ不思議な事に国内で最も倍率の高い、人気で憧れで羨望の対象のこの学科に合格しているんでしょうか!?」
やっぱり怒られた、と諦めたように苦笑いを見せながら、手にした二枚の手紙の封筒の裏面を見せた。
「実は……、民商連とエインズワース伯爵双方の強い推薦があったんだよ」
それはもう脅迫に近いほどの。と溜息と共に声を洩らす学長。
「ぜひ君は術式全科に、と念を押されたんだよ、すまないね、頭があがらんのだよ。よりによってあの二人には。
それに術力及び身体能力、さらに戦闘に関する能力も申し分ないとのお墨付きも貰ってな」
二枚の封筒の裏側――エインズワース伯爵と民商連のサインの入った封筒――を見せながら、慌てて弁解する学長を一通り睨んだ後、書類を戻した。
「で、僕も学長もそんな墨を押しつけられたんですね。全く」
「き、君は変わっているね。
普通なら両手を上げて喜ぶというのに。
これでも一応大金つぎ込んででも入りたいって人が国中にいるんだがな、術式全科は」
「変わっているのは認めますよ。それにしても今更術力について学ぶことなんてないのに。
ま、どうこう言っても埒(らち)がない。諦めて伯爵たちの企みに嵌(はま)りますよ」
ハーヴェイは諦めた口調でもらった資料や鍵を鞄にしまっていった。