君と竜が望んだ世界
「よう、アレン。おはよう」
  
「おはよう」

    
「……相変わらず元気ねぇな」

「そうでもないよ。朝くらいは静かに過ごしたいだけだよ。
そういうジェイクはどうしたの?気持ち悪いよ。いつもの五割増しくらいの機嫌の良さ」


 朝から五割増しのご機嫌で挨拶したのはジェイク。

 赤みのある茶色い髪と、見た目通りの激しくて喧嘩の強そうな体育系。

 体躯が大きいというわけではないが、体を動かすことが好きな彼は、きっとその印象を喜んで受け入れるだろう。



 そんな彼、ジェイクとアレンとさほど変わらない身長だが性格は真逆。

 人とあまり喋らないアレンとは対照的に初対面でも気軽に話しかけちゃうやつだ。


「実は昨日の帰り先生達の会話聞こえたんだけどさ、近々転入生来るって噂あったじゃん?」

「知らない……それ本当!?」

「珍しく食いついた!まぁ、それはいいとして、今日なんだってさ。来るの」

 アレンは濃い金髪を風に受けながら教室の窓際に立ってジェイクの話に耳を傾けていた。


──数か月前、アレンは人を探すためにこの街に引っ越してきた。


 その子に会いたくて遠い故郷を離れてここまで来た。


 入学式からまだ一週間だが、仲良くなりそれを知っているジェイクはさりげなく“新入生”の情報をアレンに持ってきたのだ。


「入学式から一週間しか経ってないのに珍しいね。どこの科かな。運が良ければ見れるかも」

 そんないつもの調子で話しているといつの間にか先生が来ていた。


 先生を見るやいなや、生徒達は早足で各自の席に着いた。
 
 適当に挨拶を済ませると、ロイはいつもどおり教科書を開き、授業を始めた。


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