君と竜が望んだ世界
新入生の噂にそわそわしているのはアレンとジェイクだけじゃないようだ。
どこの科でどこのクラスで、あまつさえ学年すら知らないというのに。
だが、ロイが何事もなく普通に授業を開始したことによって、ほんの少しの興味と希望と期待がなくなっていった。
――◇――
授業が始まってしばらくたった頃、ドアを叩く音と共に誰かが教室に入ってきた。
「失礼します。今日からお世話になります、ハーヴェイ・ゼルギウスです」
中途半端で突然のタイミングに登場したハーヴェイに驚いたのは生徒達だけではなかった。
「ハー…ヴェイ…! ハーヴェイ? 本当にハーヴェイなのか? いや、何で……生きて、た……?」
持っていた教科書を落とし、生徒たちが「新入生が自分たちのクラスに来た」と騒ぐ間もないほど、ロイは勢いよくドアに向かった。
「ロイ…アシュレイ…?
何でお前がネストリ学園(こんな所)に? えっ、と、軍はどうしたんだよ?」
「いや、俺のことはどうでもいい。それよりハーヴェイ、お前何で……、生きていた……?」
ハーヴェイの両肩をがっしりとつかんで勢いよく揺さぶった。
だがそんなロイのおかげで、ハーヴェイは、はっと今の情況を思い出した。
「だってお前は、あの時んぐっ……」
「相変わらずせわしいな!」
何かを言おうとするロイの口を、ハーヴェイは慌ててだが笑いながら空いた手で塞いだ。
さらに「今、ここで話すことじゃない」と耳元で囁くと、ロイは冷静さを取り戻し、「悪い」と一言謝りながら教師の顔に戻った。
二人の様子を見ていた生徒達は少し驚いたものの、新入生の紹介を心待ちにしているようだった。
それに気づいたロイは、ハーヴェイを真ん中に立たせ、自己紹介をさせた。
「諸事情により一週間遅れで入学することになりました、ハーヴェイ・ゼルギウスです。遅れての入学ですがどうぞよろしくお願いします」
窓から入るそよ風に揺れる黒く少し長めの髪、見つめられると動けなくなるような揺ぎのない真っ直ぐな黒い瞳。
闇のように黒い瞳はどこか光りめいていて、赤い光を映した漆黒の宝石のようだ。
どこの科でどこのクラスで、あまつさえ学年すら知らないというのに。
だが、ロイが何事もなく普通に授業を開始したことによって、ほんの少しの興味と希望と期待がなくなっていった。
――◇――
授業が始まってしばらくたった頃、ドアを叩く音と共に誰かが教室に入ってきた。
「失礼します。今日からお世話になります、ハーヴェイ・ゼルギウスです」
中途半端で突然のタイミングに登場したハーヴェイに驚いたのは生徒達だけではなかった。
「ハー…ヴェイ…! ハーヴェイ? 本当にハーヴェイなのか? いや、何で……生きて、た……?」
持っていた教科書を落とし、生徒たちが「新入生が自分たちのクラスに来た」と騒ぐ間もないほど、ロイは勢いよくドアに向かった。
「ロイ…アシュレイ…?
何でお前がネストリ学園(こんな所)に? えっ、と、軍はどうしたんだよ?」
「いや、俺のことはどうでもいい。それよりハーヴェイ、お前何で……、生きていた……?」
ハーヴェイの両肩をがっしりとつかんで勢いよく揺さぶった。
だがそんなロイのおかげで、ハーヴェイは、はっと今の情況を思い出した。
「だってお前は、あの時んぐっ……」
「相変わらずせわしいな!」
何かを言おうとするロイの口を、ハーヴェイは慌ててだが笑いながら空いた手で塞いだ。
さらに「今、ここで話すことじゃない」と耳元で囁くと、ロイは冷静さを取り戻し、「悪い」と一言謝りながら教師の顔に戻った。
二人の様子を見ていた生徒達は少し驚いたものの、新入生の紹介を心待ちにしているようだった。
それに気づいたロイは、ハーヴェイを真ん中に立たせ、自己紹介をさせた。
「諸事情により一週間遅れで入学することになりました、ハーヴェイ・ゼルギウスです。遅れての入学ですがどうぞよろしくお願いします」
窓から入るそよ風に揺れる黒く少し長めの髪、見つめられると動けなくなるような揺ぎのない真っ直ぐな黒い瞳。
闇のように黒い瞳はどこか光りめいていて、赤い光を映した漆黒の宝石のようだ。