君と竜が望んだ世界
 最後の人質となった研究員を助けるため、手負いの隊員と人質を先に脱出させ、ハーヴェイ
――当時の“特殊潜入部隊”隊長だったハーヴェイ・クレネル大尉率いる少数名が引き続き作戦を続行した。

 徹底抗戦する敵の手からなんとか、最後の研究員を助け出したと知らせが入った。

 あとは無事に脱出を……、そう思った矢先の出来事だった。

 建物が爆発した。次々に、逃げ場を消していくかのように、連鎖的に。

 建物が全壊するどころか、木っ端微塵になるかと思われる程、大規模な大爆発も起こった。
 否、起こされたのだ。

 その時その場にいた仲間――部下や、敵に至るまで全員が死んだ。

 そう思われていたし、ロイもそう信じていた。
 軍部にもそう記録されている。


 だが生きていた者がいた。ここに確かに、生き残っていた。


「――あれはあいつらの最後の足掻きだったってわけかよ」

 ハーヴェイは悔しそうに言うが、それでも落ち着いていた。


 全ては過去の出来事。戻れはしないし過去を変えることなどできない。

 ハーヴェイにもそれがわかっているからこそ、約十年という年月で風化してしまった感情からはあまり激しさは溢れ出はしなかった。

 それでも記憶は残っている。とにかく無我夢中で必死だった、というだけのそれだけの記憶が。

 あの時はわけもわからず、ただ、あの爆発から脱出し、本能でも生き延びることだけを考えていた。


 普通なら出来得ない、不可能なことだ。だが確かにあの時、不可能を可能という結果にして残した。ここに。運は彼に傾き、神は彼に味方した。
   ハーヴェイが、ハーヴェイの体を流れる『血』が彼を生かした。



「ハーヴェイ、あれは……」

 あれは違うんだ、そう言おうとするロイの口とは対照に、頭では理性が働いていてブレーキをかける。
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