君と竜が望んだ世界
 退役したとはいえ、軍事機密の口外は硬く厳しく禁じられている。

 それに今でも軍を手伝う事もあるのだ。


「それにしても、あの時先にロイたち脱出させといてよかったよ。実は巻き込まれてんじゃないかー、とか考えてさ。
 死んだ部下たちには悪いけど……ロイが生きててくれてよかった」

 ハーヴェイはふわりと顔に満面の笑みを作って見せた。

 しかし、すぐに浮かない顔をしたまま大人しいロイをみて口を開いた。


「……ロイ。聞きたくてたまらないんだろ、理由を」

 一息ついたハーヴェイがやんわりとロイを向く。

──時が経とうとも、親友には隠せないな──

 ロイは本音を言うとどうしても聞きたかった。ハーヴェイがなぜ生きているか、どうやってあんな状態の中を生き残ったのかを。

 でもあの時の被害者たる本人ハーヴェイに、そのおかげで生き残った自分から聞くのは気が引けて、怖くて、申し訳なくて……言い出せなかった。


「……俺が、『混血』だからだ」

 静かにハーヴェイが声を絞り出した。

 それは確かにロイがもつ疑問への回答だった。

 だがロイは深くは考えていなかった。どこの国の血だよ、と軽く考えたのだろう、あまり驚きを見せずに尋ねた。


「こん、けつ? ハーフだったのか、お前! で、どの人種と?」


 真剣に話すハーヴェイだったが、ロイはそれがどうした、という態度で軽く返したのだ。

 
「いや、クオーターなんだ。
 ……イルブスの」


< 44 / 66 >

この作品をシェア

pagetop