君と竜が望んだ世界
 それにしても。合点がいったとばかりに天井を仰ぐロイ。

「あんな小憎たらしいガキみてぇだったお前が後ろから刺してやりたくなる位強かったのも! ブブカのあんな惨状から生き残れたのも! あの頃とほとんど外見が変わってないのも!
 ぜぇーんぶ、全部エルフの血のせいだったのか……!」


「いや、おかげ、と言うべきなんだろうな」と、大きく頷きながら一人で納得していた。


「あーでも俺四分の一(クオーター)だからな。混血じゃ普通はそこまでの力はないよ。
 実際は二分の一(ハーフ)ですら純血に比べたらカスって思われる位だ」

 相も変わらず客観的な口調で話す。

「じゃあお前は何だ? どこのどいつだっけ? 戦えども、戦えども負け知らずの、インチキくさい力を振り回してたのは!
 魔獣だけならともかく味方の上官達まで片っ端からビビらせてたのはよ? 突然変異か何かか?」

 子供のように尖らせた口で拗(す)ねたようにハーヴェイに突っかかる。


「よくわからないけど、そんな感じじゃないかな。それに俺だって不思議に思ってはいるんだ。たった四分の一なのにさ。
……昔、だけど、まだ祖国(くに)にいた頃さ、俺本物に勝った、こともあるんだよね、一応。そしたら本当はクオーターなんて嘘だろって疑われたこともあるし」

 イルブス(エルフ)の血が流れているとはいえ、自身はがクオーターであるため、純粋な誇り高き一族を純血とは言わず、あえて“本物”と言った。

 ハーフはおろか、クオーターごときに負けるなんて屈辱以外の何物でもない、と思うほど“純血”には力があることを知っているから。

「さて、一体誰の血のおかげなんだろうな」

 考え事をしていたらしいロイが、不意にハーヴェイに近づいた。

「時にハーヴェイ」

「な、なんだよ、そんな近づいて。気持ちが悪いな」


「お前実際のところ、幾つだ?」

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